理学療法士の生存戦略

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こんにちは、K田です!

今回は、『理学療法士の生存戦略』についてお話ししていこうと思います。

理学療法士とは

読者さんの中には、理学療法士がそもそもどんな職業がご存知無い方もいると思いますので、まずは理学療法士について簡単に説明していきます。

日本理学療法士協会のホームページから引用すると、

“理学療法士はPhysical Therapist(PT)とも呼ばれます。ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気等の物理的手段を治療目的に利用するもの)などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職です。”と紹介されています。

(日本理学療法士協会:https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapist/)

ものすごく簡単に言うと、日常のいろいろな動作についての動作の専門家です。

日常では歩く以外にも、起き上がる・立ち上がる・立ってバランスをとる等々、色々な動作を行いますよね。

それら全て、理学療法士の診療の範疇に入ります。(他にも作業療法・言語聴覚療法もありますが、ここでは割愛します。)

最近では、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の自主練に理学療法士の方が同席していたとの記事も目にしました。

ドジャース・大谷に“神の手” コービーさん支えた理学療法士が自主トレで熱視線― スポニチ Sponichi Annex 野球

また、プロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手も専属の理学療法士(フィジオセラピストと記載されていました)のサポートを受けていると紹介されていました。

これらのようにスポーツ分野にも深く携わっている理学療法士ですが、本邦では主に病院・介護施設・介護サービス等の事業所で働かれている方がほとんどだと思います。

中には個人で起業されて、パーソナルトレーナーや企業を経営されている方散見されますが、本の一握りだと思います。

【理学療法士の将来性について】

理学療法士のイメージや職域について簡単に説明しましたが、次に実際の将来性についてお話していこうと思います。

その前に、現在本邦内にどれくらい理学療法士がいるのか確認してみましょう。

2023年3月末時点では全国で136,357人の理学療法士が働かれています。また、左記の数字は理学療法士協会員の人数なので、非会員を含めるともう少し人数は多いと思われます。

また、1年でどれくらい理学療法士の人数が増加しているかというと令和5年度は11,312人(合格率:87.4%)の方が国家試験に合格しており、ここ10年は毎年100,00人程度の方が合格されています。ちなみに、理学療法士試験が初開催された昭和41年度の国家試験の合格者数は183人(合格率:15%)であり、いかにここ10年程で理学療法士の人数が増加しているかがわかると思います。

ここで今私が懸念しているのが、需要と供給のバランスの崩壊です。

こちらの図をご覧ください。

引用元(作者: BlueFruit様)https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=22627314&word=%E9%9C%80%E8%A6%81%E6%9B%B2%E7%B7%9A%E3%81%A8%E4%BE%9B%E7%B5%A6%E6%9B%B2%E7%B7%9A%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%B8%82%E5%A0%B4%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%8B%95&data_type=&from_order_history=&downloader_register=success

需要が多く供給が少なければ物の価格は上昇し、供給が多く受容が少なければ価格は下落します。

これを現在の理学療法士の世界に当てはめてみましょう。

需要:一定数は必要とされているが、人口の減少に伴いいずれ減少すると予想される

供給:毎年100,00人増加している

いかがでしょうか?私は、このままではいずれ供給過多となり、価格は下落=理学療法士の賃金の悪化(とまではいかなくても上昇率の悪化)してしまうのではないかと懸念を抱いております。

現在、日本は物価が上昇しており、インフレが進んでいる状態と言えます。大手企業においては、続々と賃上げを表明しており、今後もその流れは加速していくと思われます。

しかし、理学療法士においてはどうでしょうか?保険外診療をしていたり、会社を立ち上げ個人事業主として働かれている方を除き、多くの方は診療報酬の下で働かれていると思います。

診療報酬=得られる報酬の額が決まっているとも解釈することができ、よほど勤め先の収益が良くない限りは、大幅な給与アップには至りづらいのではないかなという印象を私はもっています。

もちろん、お金だけで仕事を決めることについては私も同意しかねますが、かといって、そこを蔑ろにして日々の生活が苦しくなっては本末転倒です。

以前職場の同期と帰り道で「ありがとうの言葉でお腹はふくれねえよなー…」と話したのを今でも覚えています。

【これからどうすればよいのか?】

少しネガティブな事ばかり述べてしまいましたが、理学療法士事態は非常に素晴らしい職業とであり、世の中に絶対に必要な職業と思っています。

最近はchatGPTのようなAIを用いたサービスが見られるようになっており、世の中でも、今後AIに代替される職業ランキングなんてのも発表されています。

こちらはIndeedのHPからの引用ですが、オックスフォード大学の研究で、AIにとってかわられるリスク順位が発表されました。

 自動化リスクの低い仕事(なくならない仕事、2013年オックスフォード大の研究)

順位職種
1レクリエーション療法士
2機械工、据付工、修理工の現場監督者
3緊急事態管理ディレクター
4メンタルヘルス・薬物乱用防止ソーシャルワーカー
5聴覚機能訓練士
6作業療法士
7義肢装具士
8ヘルスケア・ソーシャルワーカー
9口腔・顎顔面外科医
10消防・防災業務従事者の現場監督者

● 自動化リスクの高い仕事(なくなる可能性の高い仕事、2013年オックスフォード大の研究)

順位職種(日本語)
691データ入力
692図書館技師
693会計アシスタント
694写真プロセス作業員及び加工機オペレータ
695税務申告
696貨物代理店業
697時計修理業者
698保険引受業者
699数学技術者
700手芸裁縫
701権利調査員、抄録作成者、調査員
702テレマーケター

参考:“THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?” Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne, 2013/9/17

引用:https://jp.indeed.com/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%81%E3%81%82%E3%82%8C/tenshoku/consideration/jobs-that-will-disappear-in-near-future

この表をみると、レクリエーション療法士・作業療法士といった職種が上位にランクインしており、理学療法士も同等の順位にはいると予想されます。

少なくとも、AIに代替されるといったリスクは少ないようです。

しかし、先ほども述べたように、そもそも供給過多となるリスクは残っています。

では今後生き残っていくためにはどうすればよいでしょうか?

私の意見は「より専門性を高める」です。

例えば野球チームを想像してみましょう。WBCで優勝するために、あなたが野球チームの監督だったらどんな選手がいて欲しいですか?(もちろん、大谷選手のような選手がたくさんいればいいですが(笑))

足の早い選手、HRの打てる選手、守備のうまい選手、チャンスに強い選手・・・

これを理学療法士に置き換えてみましょう。

運動器、脳血管、心大血管、呼吸器、腎臓、小児・・・

バランスがとれた選手ももちろんいたら最高ですが、メジャー級の選手なんてほんの一握りです。理学療法士の世界でも、全ての分野に精通した方なんて中々いないのではないでしょうか?(少なくとも私はであったことはありません)

野球に限らずトップレベルで活躍されている選手の多くは、何かしら一芸をもった選手が多いと思います。

理学療法士も、今後戦力外通告を出されることがないよう、必要とされるような専門知識を身に着けて行く必要があるのではないでしょうか。

以前、理学療法士協会の斉藤会長に「今後の理学療法士のライフプランが不安です。どうすればよいでしょうか?」と質問をしたことがあります。その時の答えは「しっかり理学療法士をしてください」でした。

今となって、その意味がやっと分かってきた気がします。

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