腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果について〜vol.1~

医療

こんにちは、K田です。

前回は、腎臓リハビリテーションについてお話をさせていただきました。

前回の記事の中で、CKD透析患者さんにおける、運動療法の効果について簡単に述べたと思います。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。

そこで、今回は【腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果】についてお話していこうと思います。

なお、記事の題名にvol.1とあるように、何回かに分けてお話していこうと思います。

今回は【最大酸素摂取量の増加】についてお話していきます。

最大酸素摂取量(VO2max)とは?

最大酸素摂取量(VO2max)は、運動中に体に取り込める酸素の最大量を表す指標であり、有酸素代謝が最大値となる条件での時間あたりの酸素消費量のことです。これは、運動耐容能(=体力)を評価する重要な指標です。

人間が運動する時には、筋肉を動かすためのエネルギーが必要となりますが、エネルギーを生み出す仕組み=代謝系が存在します。

それは、

①クレアチニンリン酸ークレアチン系、②グリコーゲンー乳酸系、③有酸素系の3つです。

これらを詳しく説明すると、さらに2〜3記事必要となるため、詳しくは割愛しますが、上記の①・②はいわゆる短距離走やウェイトリフティング等の瞬間的に力を必要とする際に動員されます。

それに加え、③は長距離走やウォーキング等の、いわゆる有酸素運動に動員されます。

①・②の代謝の際に酸素は必要となりませんが、③の代謝の際は、文字とおりグルコース・脂肪・アミノ酸+酸素を元にエネルギーを産生します。③の有酸素系の代謝の特徴は、栄養分が続く限り、ほぼ無限に運動できる点です。

また、我々が普段生活する中で、重いものなどを瞬間的に持ち上げる際には①・②の代謝系が動員されますが、移動したり・買い物に行く際にはほとんど③の代謝系が動員されています。(そりゃすぐにエネルギーが枯渇したら生活できませんからね。)

そのため、普段の歩行や日常生活の動作において、どれだけ体力があるか=酸素を取り込めて使えるかという風に考えることができます。

CKD・透析患者さんのVO2maxの特徴

CKD患者さんと透析患者さんの最大酸素摂取量(VO2max)は、一般の人と比べて低く、特に透析患者さんにおいては、平均で約20ml/kg/minと言われています。

これは、健常人の約60%に相当する値です。

このような特徴があると、以下のような問題点が出てきてしまいます。

  • 疲労感: 日常生活を送るだけでもすぐに疲れてしまい、活動範囲が狭くなります。
  • 運動能力の低下: 運動をするとすぐに息切れしたり、体が動かなかったりします。
  • 生活の質の低下: 運動能力の低下によって、日常生活に支障をきたし、生活の質が低下します。
  • 合併症のリスク増加: 運動量が低下すると、筋肉量も減少します、また、透析患者さんにおいては心機能の低下している方も多く、さらに糖尿病高血圧などの合併症のリスクを高めます。
  • 死亡リスク増加: VO2maxが低いことは、死亡リスクの増加と関連していることが報告されています。

透析患者さんの身体機能は同年代の健常人の70%まで低下しているという報告もありますが、VO2cmaxの低下もそれに大きく影響していることが考えられます。

運動療法がVO2max改善にどう影響するか?

では、運動療法を行うことで、何故VO2maxが改善するのでしょうか?

運動療法がVO2maxを改善するメカニズムは、多岐にわたりますが、以下に主なメカニズムをまとめました。

1. 筋力・筋持久力の向上

運動療法は、筋力筋持久力の向上を促します。

運動療法により、筋繊維の太さや数が増えるで、より多くの酸素を筋肉に取り込むことができるようにします。

筋持久力の向上は、ミトコンドリアの数や機能を向上させることで、酸素をより効率的にエネルギーに変換できるようになります

結果として、運動中の酸素摂取量が増加し、VO2maxが改善されます。

イメージとしては、自転車を漕ぐことを想像してみましょう。

筋力と筋持久力が向上すると、より強く、より長く漕ぐことができるようになり、より多くの酸素を取り込むことができるようになります。

2. 心肺機能の向上

2つ目の理由は心肺機能の向上です。

運動時において、有酸素代謝が最大レベルに達していても、呼吸器系は筋肉への酸素供給の主要な制限因子はならないと言われており、心臓から筋肉へ血液を送り出すことができる能力こそが、重要と言われています。

持久走競技で最大パフォーマンスを発揮する際の主要な制限因子が心臓血管系であることから、心拍出量が低下するタイプの心血管疾患を有する患者では全身の筋力・運動耐容能低下が認めるのは容易に想像できるかと思おいます。

そのため、

心肺機能が向上すると、より多くの酸素を取り込むことができるようになり、有酸素系の代謝がより長く行えるようになり、運動耐容能の向上につながります。

ここで何故心機能とVO2maxが影響するの?と思われるかたもいると思いますが、ここでワッシャーマンの歯車を思い出してみましょう。

肺・心臓・筋肉は互いに影響しており、心機能が低下すると、肺での循環も不十分となります。

そのため、心機能の改善は非常に重要な視点といえます。

また、CKD・透析患者さんにおいては心機能が低下している患者さんも多く、その影響はより大きいと考えられます。

3. 血管機能の改善

運動療法は、血管機能の改善にも効果があります。

運動によって、血管の内皮細胞が活性化され、一酸化窒素などの血管拡張物質が産生されます。

NOは、血管を拡張し、血流を改善します。

結果として、運動中の酸素供給量が増加し、VO2maxが改善されます。

イメージとしては、ホースを想像してみましょう。

血管機能が向上すると、ホースの口径が広がり、より多くの水が流れることができるようになります。

4. 血液量の増加

運動療法は、血液量の増加にも効果があります。

運動によって、赤血球の産生が促進されます。

赤血球は、酸素を運搬する役割を担っています。

CKD・透析患者さんの運動耐容能の低下の一因が貧血でもあります。

結果として、運動中の酸素運搬量が増加し、VO2maxが改善されます。

血液量が増加すると、より多くの赤血球=酸素を運ぶことができるようになり、筋肉がより効率的に稼働することができます。

まとめ

本日は腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果についてというテーマで、運動療法で最大酸素摂取量が改善するメカニズムをお話してきました。

CKD・透析患者さんにおいて、運動耐容能低下は非常に大きな問題であり、ADL・QOLに直結します。

そのため、運動療法を行う上で、運動耐容能をいかに改善させるかという視点は、非常に大切となってくると考えています。

ぜひ皆さん、患者さんの体力が改善してきたなと感じたら、何故良くなったのかな?と考えながら運動を実施していってください。

その時に、この記事がみなさんの助けになってくれれば幸いです。

今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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