みなさんこんにちは、K田です。
今回は、『腎臓リハビリテーションにおける運動療法の禁忌』というテーマで話を進めていこうと思います。
腎臓リハビリテーションに関しては、近年様々な研究結果が報告されており、運動療法の効果が確立されつつあります。
皆さんの施設はどうでしょうか?
CKD患者さんや透析患者さんへの運動療法の提供はされていますでしょうか?
運動療法を提供するうえで、1つしっかりと確認しておくべき点があります。
それこそが『運動療法の禁忌』なのです。
運動というのは、身体に負荷をかける治療であり、即ち通常時よりもリスクが高くなっていることに他なりません。
そのため、安全に運動療法を行うためには、禁忌事項について確実に理解しておく必要があります。
ポケモンやるのに、くさタイプでほのおタイプに戦いを挑みませんよね??
それと同じくらい(?)、リスク管理は重要になるので、ここで今一度しっかりと確認していきましょう!
この記事はこんな人にオススメです!
- 腎臓リハビリテーションについて興味のある人
- 腎リハにおける運動療法の禁忌について知りたい人
- これから腎臓リハビリテーションを始めようと思っている人
禁忌とは?
禁忌って聞いたことあるけど、詳しくは知らないなあ
そもそも禁忌って一体何でしょうか?よくゲームとかアニメで『禁忌の〜』とか『禁忌術式〜』とか言うのを耳にしますが、医療での禁忌について、簡単におさらいしていきましょう。
医療現場で使用される「禁忌」という言葉は、『特定の治療や行為、薬剤の使用が絶対に避けるべき条件や状況』を指します。
禁忌に該当する場合、それを無視して治療を行うと患者の健康や安全が損なわれる可能性が非常に高いため、医療従事者にとって重要な判断基準となります。
また、禁忌には『絶対的禁忌』と『相対的禁忌』の2つが存在します。
絶対的禁忌
絶対的禁忌とは、文字通り”絶対に”いかなる場合でも避けなければならないものを指します。
医療禁忌マニュアルによると、絶対禁忌とは「その医療行為によって患者さんが死,もしくは不可逆的な障害を招くもの」と明記されています。
具体例をあげてみましょう。例えば、ピーナッツアレルギーの人がいたとします。
その人にピーナッツを食べさせてしまうと、アナフィラキシーショックで呼吸停止等の危険な状態に陥る可能性があります。
この場合、ピーナッツは”絶対に”食べてはいけません。
ピーナッツアレルギーの人にとって、ピーナッツの接種が”絶対的禁忌”となるのです。
相対的禁忌
一方で相対的禁忌とは、「場合によってはやってもいいけれど、慎重に考えなければならない状況」を指します。
医療禁忌マニュアルによると、相対的禁忌とは「それほどの危険性はないものの,医療上通常行ってはならないこと」と明記されています。
例えば、高血圧の患者さんが風を引いてしまいました。しかし、風邪薬に含まれる成分が血圧をさらに上げるかもしれません。
普通は、血圧が上がりすぎると危険なので、「その薬はできるだけ避けましょう」と判断されます。
しかし、どうしても高熱が続いて辛そうで、ほかの方法では改善しない場合、リスクを理解した上で「少しだけ使いましょう」となることがあります。
このように、相対的禁忌における考え方としては、「対象となる医療行為を実施したことによるリスクと利益のバランスをとる」ことが重要です。
腎臓リハビリテーションにおける運動療法の禁忌
禁忌についてはわかった!でも、腎臓リハビリテーションの禁忌って??
禁忌について理解が深まったところで、腎臓リハビリテーションにおける運動療法の禁忌についてお話していきましょう。
CKD患者への運動療法の禁忌
現在、保存期CKD患者さんに対する運動療法の禁忌や中止基準を明確にしたものはありません。
そのため、心疾患を合併したCKD患者さんは、「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021改訂版)」に記載されている禁忌・中止基準を適用することが勧められています。
ここで着目したいのが、表24の「積極的な運動療法が禁忌となる疾患・病態」についてと表25の「運動療法実施中の中止基準」について分けられている点です。
表24では運動療法の禁忌が書いてあり、これは運動前に確認して、対象の患者さんが当てはまらないか確認する必要があります。
CKD患者さんや透析患者さんは、心血管疾患合併率が高く、同時に死亡率の中でも心血管疾患が占める割合が最も多くなっています。
そのため、心血管疾患や循環動態については、特に注意する必要があります。
また、禁忌でないものが記載されているのも1つのポイントであり、左室駆出率(EF)の低下や循環動態が安定しているHR管理が良好な不整脈患者さんは運動療法事態が禁忌にはなりません。
表25では、運動療法”実施中”の中止基準が書かれています。
即ち、「運動療法を実施している間は以下の内容に準じて判断しなさい」ということになります。
ここでも、不整脈や循環動態についての確認が記載されています。
血圧や血中酸素濃度については、比較的容易に測定することができますが、不整脈やST変化は、実際に心電図を見ていないと判断ができません。
そのため、既往に心血管疾患を合併していたり、不整脈がある患者さんに対しては、1度心電図装着下で運動を進め、問題がないか確認する必要があります。
また、CKDの由来が生活習慣病であれば、下の表も参考にするとよいとされています。
ここでも、高血圧や不整脈が禁忌として挙げられていますが、糖尿病患者さんに関しては、血糖値やケトアシドーシス・糖尿病性網膜症も禁忌になりますので、注意が必要です。
透析中運動療法の禁忌
透析中の運動療法における禁忌は以下の通りになります。
こちらは腎臓リハビリテーションに記載されている内容になります。
心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインと比較すると、少しボリュームが減りましたが、内容としては心血管疾患・不整脈・循環動態についての記載がほとんどを占めています。
臨床場面でよく遭遇するのは、相対的禁忌の中の”重症高血圧”や”精神的および肉体的問題による運動能力低下”です。
透析患者さんは、体重の増えが多いと血圧が容易に上昇しますし、透析による合併症として関節痛や倦怠感が生じることがあります。
その際は、無理に運動を行うのではなく、体調に合わせたプログラムへ変更することが重要です。
まとめ
今回は、「腎臓リハビリテーションにおける運動療法の禁忌」というテーマでお話をしてきました。
今回の話をまとめると、以下のとおりです。
- 絶対的禁忌は絶対にやっちゃだめ、相対的禁忌はリスクと利益のバランスを鑑みて考える。
- CKD・透析患者さんは、生活習慣病や心血管疾患を合併している割合が多く、運動の管理がより重要である。
- CKD患者さんは、心血管疾患や循環動態に注意する。
- 合併している生活習慣病により注意する項目が変わるので注意する。
- 透析中の運動療法中に遭遇しやすいのが血圧上昇や患者さんの訴え。その場合は体調に合わせたプログラムへ変更する。
心腎連関と言われるように、心臓と腎臓には密接な関係があります。
腎臓リハビリテーションにおいてもそれが良くわかったと思います。
特にこれから気温が低下してくると、血圧が高くなったり、心臓に負担がかかったり、体調が良くなかったりと、色々な症状が出現してくる可能性があります。
そのため、しっかりとガイドラインを確認し、運動療法の禁忌や中止基準を理解したうえで、運動療法の取り組むようにしましょう。
こちらの腎臓リハビリテーションガイドライン・心臓リハビリテーションガイドラインともに乗せて起きますので、必要に応じてアクセスしてみてください!
腎臓リハビリテーションガイドライン
心臓リハビリテーションガイドライン
この記事が皆さんが腎臓リハビリテーションを進めていくうえでのお役に立てば嬉しいです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
コメント