透析クリニックにおいての理学療法士の役割を考察~理学療法士は三方良しな存在となれるか!?~

ビジネス

こんにちは、K田です。

先日、【皆様へのご報告】という記事にて、4月より透析クリニックへ転職したことをお伝えさせていただきました。

理学療法士が透析クリニックへ行って何をするの?と思われる方も多いと思います。

そこで、今回は【透析クリニックにおいての理学療法士の役割を考察】というテーマで話を進めていこうと思います。

4/1から現在の職場で働き始め、まだ2週間も経っておりませんが、私なりの考えをまとめましたので、是非ご一読いただければと思います。

透析クリニックについて

まず最初に、透析について簡単に説明します。

人工透析(正式名称:血液透析療法)は、腎臓機能の低下によって血液のろ過を行えなくなった人に、人工的な方法で血液から老廃物や余分の水分を排出する治療です。腎臓は血液を濾過して老廃物を取り除き、体に必要な成分だけを再吸収し、尿として体外に排出します。しかし、腎不全によりこの機能が低下すると、尿毒症症状が現れ、日常生活が制限されることがあります。

血液透析では、血液をダイアライザーと呼ばれる人工腎臓に送り、老廃物や余分な水分を除去した後、きれいに浄化された血液を体内に戻します。 透析の頻度は通常週に2~3回で、1回あたり約4時間程度の治療を行います。

血液透析の図

このように、人工透析を行っているのが透析クリニックです。総合病院では透析施設を備えている所が多いと思いますが、透析患者さんの多くは自分のかかりつけの透析クリニックへ通院されています。

私が現在勤めている透析クリニックは、ほとんどの患者さんが外来透析の患者さん=病院へ透析の為に通ってくる患者さんです。

当院には数名の医師が勤務しており、通常の外来診療も行っていますが、メインは透析治療となります。

また、これは施設によって異なりますが、当院においては入院病床と老人ホームも併設されており、そちらに入院・入所されながら透析治療を行われている患者さんもいらっしゃいます。

近年では腎臓リハビリテーションが確立されてきており、運動療法を取りいれる施設が増えてきていると感じています。当院でも看護師主体の元、主に外来透析患者さんへ運動療法を実施しています。

しかし、通常の透析業務に加え、運動療法を実施するのは非常に看護師の負担が増加するという側面もあり、看護師は運動の専門家ではないため、細かな運動負荷設定が難しいといった話も聞いたことがあります。

そのため、運動療法を開始しても、患者さんごとへのテーラーメイドな運動の提供が難しいというのが現状の課題と言えます。

外来透析患者さんへのPTの関り

外来で通院されている患者さんに対してPTが介入する主な目的は、フレイル・サルコペニアの予防や改善、転倒予防のための動作確認や歩行補助具の確認、医師や看護師では対応が困難な問題への対応(セルフストレッチや自主運動の指導)が考えられます。

先行文献より、”理学療法士による運動は、骨折などによる入院加療や廃用症候群を予防し、身体機能、活動、参加を維持しながら透析を継続できるという点で、患者や患者家族、通院透析施設にとって大きな利益となるだけでなく維持透析療法以外に費やされる社会保障費の抑制にも寄与できる。”と報告されています。

すなわち、

身体機能を維持⇒入院や廃用のリスクを軽減⇒患者さんはADLを維持できる⇒透析施設は継続して利益を享受できる⇒透析以外にかかる社会保障費も抑制できる

というように、理学療法士が介入することで医療者・患者・国に対して「3方良し」な効果が期待できるということですね。

入院患者さんへのPTの関り

総合病院のように、療法士が数多く常駐しており、リハビリを実施する環境が整った病院においては、運動療法が必要な患者さんに対しての介入は比較的しっかりと行われているはずです。

私が以前勤務していた病院では、療法士の数がそれなりにいたため、リハビリテーションが必要な患者さんには比較的満遍なく介入できていたと思いますが、療法士が不在・少ない施設においては、離床・運動機会を提供することが難しいと考えられます。問題となるのは、そのような施設です。

透析患者さんの身体機能は、同年代の健常人の約70%も低下していると報告されており、そもそもの身体機能が低下しているという特徴があります。

そのような患者さんが何らかの原因で入院(おそらくは何かしらの病気や転倒による受傷がほとんどであると思います)された際に大きな問題となるのが、入院を契機として廃用症候群の進行です。

先述しましたが、中々リハビリ専門職以外のスタッフが患者さんに運動療法を提供することは業務負担的にも、専門性的にも障壁が高いことが問題です。

そのため、入院するということは、それを契機に運動療法が提供できない⇒廃用症候群の進行⇒車いす生活・寝たきり⇒さらに廃用症候群の進行・・・といった負のサイクルに突入してしまうリスクが非常に高いことであるといえます。

そのような中、入院患者さんがいる透析クリニックにおいては、理学療法士いることで上記の問題を解決することができます。

施設基準により、個別疾患リハビリの算定が難しい施設もありますが、患者さんのADL・QOLを維持・改善するという面においては、入院機能を有している施設においては、理学療法士はMUSTで必要なのではないかと考えています。

入所患者さんへのPTの関り

入所患者さんにおいても、主な問題点は入院患者さんと同様と言えます。

施設の形態によっては、自立されている方がほとんどの施設や、介助が必要な方が多くいる施設等、施設ごとに入所者層が大きくことなります。

身体機能やADLが低下してしまうと、今まで在籍していた施設に居られなくなってしまうケースも出てきてしまいます。施設の収入的にも、入所者さんの心情的にも、他施設に移ることになってしまうのはなるべく避けたいところです。

そのためにも、理学療法士が入所者さんにかかわることで、身体機能・ADLの維持につながり、より長い期間現状の生活を送ることができるのではないかと考えます。

その他患者さんへの関り

その他の患者さんというのは、透析を導入する前段階の慢性腎不全の方や、糖尿病等で将来的に透析への移行が懸念される患者さんを想定します。

理学療法士の介入が透析導入を遅らせる可能性については、直接的なエビデンスは限られていますが、一部の研究では、理学療法士による運動指導や生活習慣の改善支援が腎症の進行を抑制する可能性が示唆されています。

また、運動療法を継続することで、腎不全の患者さんの腎機能が改善するという研究結果も報告されており、効果的な運動療法を提供するためにも、理学療法士が介入することに意義はあるのではないかと考えます。

具体的な方法としては、外来受診時における運動指導や市町での健康教室の講師、あるいは最近では遠隔リハビリテーションなるものも登場してきており、zoom等のアプリを用いて、離れた場所にいても運動指導をすることができる、受けることができる環境が整ってきています。

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今後の理想論としては、各クリニックに一人は理学療法士が常駐or定期的に来院し、必要な患者さんに運動療法や指導を行い、糖尿病や腎不全の進行を予防し、ひいてはそれが社会保障費の削減につながることができれば最高だと思います。

まとめ

今回は【透析クリニックにおいての理学療法士の役割を考察する】といったテーマで話を進めてきました。

まとめると

  • 透析クリニックで看護師のみで運動療法を開始しても、患者さんごとへのテーラーメイドな運動の提供が難しい
  • 外来透析患者さんに対して理学療法士が介入することで、身体機能・ADLを維持することで入院や廃用のリスクを軽減し、透析施設は継続して利益を享受でき、かつ透析以外にかかる社会保障費も抑制できる。
  • 理学療法士が入院患者さん・入所者さんにかかわることで、身体機能・ADLの維持につながり、寝たきりの予防やADLの維持に寄与できる。

ということは話してきました。

理学療法士が在籍している透析クリニックはまだ数が少なく、業務内容やワークプランのイメージがしづらいのが現状です。

しかし、先述したように、透析患者さんにおいてはどの患者さんにおいても運動療法が必要であり、リハビリ適応割合が非常に高い患者群であると言えます。

今後、透析クリニックで理学療法士が働くことで、どのようなメリットや問題点があるのか、実際に働いてみて感じたり考えたことを、発信していければと思います。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。またの閲覧をお待ちしています!

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