腎臓リハビリテーションについて

医療

みなさんこんにちは、K田です!

5月に入ってからすでに半月近く経ちましたね。時間が過ぎるのが早いなと感じる今日此の頃です。

私も透析クリニックへ転職し1ヶ月が経過し、段々と仕事にも慣れてきております。

それと同時に、透析患者さんへ介入をしていく中で、色々と疑問点が出てきたり、わからないことが出てきました。

そこで、今後当ブログでは、透析クリニックへ在籍している身として、透析患者さんへのリハビリテーションについての内容を拡充させていきたいと考えています。

その第1弾として今回は「腎臓リハビリテーションについて」というテーマで話を進めていこうと思います。

腎臓リハビリテーションとは?

まず最初に、腎臓リハビリテーションとは何ぞやというところからお話していこうと思います。

日本腎臓リハビリテーション学会では、腎臓リハビリテーションについて以下のように記されています。

『腎臓リハビリテーションは、腎疾患や透析医療に基づく身体的ならびに精神的影響を軽減させるとともに、症状を調整し、生命予後を改善して、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的とした、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、 および精神・心理的サポートを行う、長期にわたる包括的なプログラムである。』

これだけ見ると、中々1回で理解するのは難しそうですね。

私なりに噛み砕いてみると、腎臓リハビリテーションとは

『CKDやHD等による身体及びメンタルへの影響を軽減させて』

『その症状を調整することで生命予後改善へとつなげて』

『病気による社会的孤立やそれによるストレス・就業に影響が出てしまう状況を改善することを目的とした』

『運動・食事・水分管理・薬・患者教育・メンタルのサポートをすべてひっくるめて長期的に行うプログラム』

と言えます。

この文言で特徴的なのは、身体機能のみならずメンタル面での影響にも触れられていたり、就業状況の改善といった、より日々の生活につながるところにも視点が向けられています。

また、リハビリテーションと言いながらも、運動以外に食事・水分管理・薬物療法等のサポートも行うと述べられており、文字通りより多くの職種で患者さんをサポートしていこうというメッセージが読み取れ、まさにCKD患者のトータルケアを目的としています。

原文は以下のURLからガイドラインをご参照ください。

”腎臓リハビリテーションガイドライン:https://jsrr.smoosy.atlas.jp/ja/guideline_jsrr

何故腎臓リハビリテーションが必要なのか

CKD患者の高齢化

今に始まったことではありませんが、年々出生率は低下しており、2023年の出生率は1.20で過去最低を記録しました。

それは相対的に高齢者の数が多くなるということを示しており、現在日本は少子高齢化をひた進んでいる状況と言えます。

その中で、CKD患者は推定1330万人、慢性腎不全透析患者は33万人まで増加しています。

厚生労働省の調査によると、

CKD患者

  • 65歳以上: 約70% (厚生労働省「国民健康・栄養調査」に基づく推定)
  • 75歳以上: 約40% (厚生労働省「国民健康・栄養調査」に基づく推定)

慢性腎不全透析患者

  • 65歳以上: 約69% (2019年末時点、「わが国の慢性透析療法の現況」より)
  • 75歳以上: 約39% (2019年末時点、「わが国の慢性透析療法の現況」より)
  • 85歳以上: 約10% (2019年末時点、「わが国の慢性透析療法の現況」より)

と報告されており、CKD患者・透析患者さんの高齢化も顕著となってきております。

また、人間は65歳以上になると、筋力は20代頃の約半分、骨密度は30代頃の約80%にまで低下すると言われています。

そのため、年々CKD・透析患者さんの身体機能は全体的に低下してくることが予想されます。(以下のCKD患者さんの身体特性も影響)

そのため、今まで以上に多方面から患者さんのサポートをしてくことが必要なのです。

CKD患者の身体特性

CKD患者さん、その中でも透析患者さんにおいては、腎性貧血・尿毒症性低栄養・骨格筋減少・筋力低下・骨格筋機能異常・運動耐容量の低下・易疲労感・活動量減 少・生活の質(quality of life:QOL)低下などが認めらます。

透析患者さんは日常生活活動(activities of daily living:ADL)の自立度は比較的保たれているものの、 運動耐容能は心不全や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の方と同レベルまで低下していると言われています。

また、身体機能を健常人と比較すると、同年代の約70%(!!)まで低下していると報告されています。

CKDのステージによってもちろん異なりますが、多くの方においてCKDを合併していたら、身体機能が低下いるというイメージをもっても良いと思います。

このような身体特性を有している状態では、日常生活に大きな影響がでることは想像に容易いと思います。

また、CKD患者は脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患発症の危険性が高く、ベースに糖尿病・高血圧・動脈硬化といった生活習慣病が併存するケースも多いことが言われています。

さらに、透析患者さんには心血管疾患や感染症等といった疾患が合併し、透析導入後の死亡率が30%を超え、一般人と比べるとその予後は極めて不良です。

そのため、様々な方向から身体機能・ADLを維持できるよう、アプローチを行っていくことが大切なのです。

腎臓リハビリテーションの目標

腎臓リハビリテーションの効果

腎臓リハビリテーションというと、多職種からのアプローチが必要であることが明記されていますが、その中核をなすのが運動療法です。

そこで、まずは運動療法による効果を説明していこうと思います。

文献によると以下の通りになります。

  1. 最大酸素摂取量の増加
  2. 左心室収縮能の亢進(安静時・運動時)
  3. 心臓副交感神経系の活性化
  4. 心臓交感神経過緊張の改善
  5. 低栄養・ 炎症複合症候群の改善
  6. 貧血の改善
  7. 睡眠の質の改善
  8. 不安・うつ・QOL の改善
  9. ADL の改善
  10. 前腕静脈サイズの増加(特に等張性運動による)
  11. 透析効率の改善
  12. 死亡率の低下

書き出してみると中々ボリューミーですね(笑)

この中でも特に日々の臨床で実感するのは

1.最大酸素摂取量の増加=運動耐容能の増加

.不安・うつ・QOLの改善

9.ADLの改善

です。

どうしても理学療法士なので、運動やADL・QOLよりの視点となっている影響もあるとは思いますが、患者さんからは

「疲れなくなった」「出かけられるようになった」などの前向きな声が聞かれています。

腎臓リハビリテーションの目標

理学療法士の立場から腎臓リハビリテーションの目標を考えると、大きなものとして、運動療法の実施により上記の効果を得ることで、患者さんをサポートしていくことと言えます。

しかしこれではなんとも抽象的でふんわりとしていますね。

私なりの意見を最後に付け加えると、

腎臓リハビリテーションの実施により、患者さんのADLを維持・向上させ、その結果として日々の生活にかかる家族や周囲の負担や、あるいは社会資源の利用を可能な限り減らし、医療・介護費という面での負担も軽減する

と考えています。

透析患者さんの治療を行う上で、1年間にかかる費用を皆さん知っていますか?

1人あたり、400〜600万円かかるそうです。これに入院・投薬・各種サービス等々を含めると、1000万円に到達するケースもありそうですね。

透析治療は行わないと命に関わるため、これを辞めるわけにはいきません。

しかし、そこに追加でかかる費用を減らすことはできるはずです。

その解決策の1つとして、運動療法による患者さん自身の健康維持があると私は考えています。

患者さんの身体機能・ADLが維持できれば、御本人のQOLが維持できるのはもちろん、ご家族や周囲の方の負担も減り、医療者や介護者の負担も減るかもしれません。また、余計なサービスや資源を使わない分、社会資源的な負担の軽減にも寄与できる可能性があります。

腎臓リハビリテーションは本人・家族・医療者・国の”4方良し”な存在となるかもしれませんね。

まとめ

今回は「腎臓リハビリテーションについて」というテーマで話を進めてきました。

本邦では、CKD・透析患者さんの高齢化が進行しており、また、より身体機能が低下しやすい患者さんに対するサポートが重要となることをお話させていただきました。

病名がついてなくても、実はCKDだった!なんと患者さんは、今後どんどん増えてくると思います。

今後診療にあたっていく上で、本格的に腎臓リハビリテーションにかかわらずとも、腎臓リハビリテーションやCKD・透析患者さんの概要についての知識は、万人がもっていく必要があるのではないかと思っています。

この記事を読んで、少しでも腎臓リハビリテーションに興味を持ったり、CKD・透析患者さんについて知ろうと思う方が1人でも居てくれれば嬉しいです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

※今回の参考文献※

  • 腎臓リハビリテーションガイドライン
  • CKD における運動の効用― これまでのエビデンスと可能性― 上月正博先生 2012

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