みなさん、あけましておめでとうございます!K田(@minevista117)です。
本年も何卒よろしくお願いします。やっとこさJSDTの抄録が片付きました・・・。
さて、今年も腎臓リハビリテーションのことについてお話していこうと思います。
透析患者さんの抱える問題点の1つとして、”腎性貧血”が挙げられます。
貧血があると、立ち眩みをしやすかったり、疲れやすくなったり、酷いと心臓に負担がかかってしまうこともあります。
そのため、貧血の改善は透析患者さんに対して、非常に重要な治療になります。
そこで今回は、【腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果〜vol.6】ということで、『貧血の改善』について解説していこうと思います。
この記事はこんな人にオススメです。
- 腎臓リハビリテーションについて興味のある人
- 透析患者さんへの運動療法の効果について知りたい人
貧血について
CKDさんにおける貧血
腎機能が低下すると、様々な原因で貧血が発生します。
その最も大きな原因が、腎臓で作られるエリスロポエチン(EPO)が減少することで、それが原因で生じる貧血を”腎性貧血”といいます。
EPOは、赤血球を作るのに必要な造血ホルモンであり、骨髄に作用して赤血球が作られます。
そして、骨髄での赤血球の産生が低下し、赤血球数やヘモグロビン濃度が減少することで貧血が生じます。
図にするとわかりやすく、以下のとおりです。
貧血による身体への影響
貧血の症状として真っ先に思い浮かぶのが、立ち眩みやふらつきでしょう。
それらの症状ももちろん出現してきますが、貧血が高度になると、より身体に大きな影響を与えてしまいます。
ヘモグロビンの濃度別に出現する症状を以下の表にまとめました。
ヘモグロビン濃度 | 症状 |
---|---|
男性: 13-14 g/dL 女性: 11-12 g/dL | ほとんど自覚症状なし |
10-13 g/dL | 倦怠感、易疲労感、動悸、息切れ、めまい、頭痛 |
8-9 g/dL | 上記に加え、心雑音、耳鳴り |
7-8 g/dL | 上記に加え、顔色不良、皮膚・粘膜の変化 |
6-7 g/dL | 上記に加え、心不全のリスク増加、輸血の考慮 |
6 g/dL以下 | 持続的な重篤な症状、緊急治療が必要 |
CKD患者さんにおいて、貧血の進行により特に注意が必要なのが、心臓への負担の増加です。
ヘモグロビンと酸素が結合することで、全身に酸素を供給することができるのですが、貧血=ヘモグロビンが少ないということなので、全身に酸素が届けづらくなってしまいます。
しかし、歩行や運動をすると、全身の筋肉で酸素を必要となります。
そうすると、身体は脈拍数を上げて何とか酸素の供給を維持しようとします。
その状態がず〜っと継続してしまうと、心臓が疲労してしまい、心負荷が高まってしまうのです。
さらに、CKD・透析患者さんは心血管疾患の合併率が高いことが知られています。
そのため、貧血が心疾患の悪化に繋がることもあるため、注意が必要なのです。
貧血改善のメカニズム
さて、ここまでで貧血が透析患者さんの身体に悪影響を及ぼしてしまうことを説明しました。
そんな中で、運動療法は貧血を改善する効果があることが知られています。
貧血改善のメカニズムについては、以下のような要因が考えられていますので、順番に説明していきます。
貧血改善のメカニズム
赤血球産生の促進
運動療法により、骨髄での赤血球産生が刺激される可能性があります。
これは、運動による組織の酸素需要の増加に対する生理的な適応反応と考えられます。
シンプルに、
身体動かすからもっと酸素を回してや〜
OK!酸素運べるように、赤血球のたくさん作るで〜!
といった感じで考えてみてください。
このようなメカニズムにより、定期的な運動により、体は酸素運搬能力を向上させるために赤血球の産生を増加させる可能性があります。
エリスロポエチン感受性の向上
定期的な運動により、体内のエリスロポエチンに対する感受性が向上する可能性があります。
感受性とは、「 外界の刺激や印象を感じ取ることができる働き」と辞書では説明されています
平たく言えば、「物質等への反応のしやすさ」と言えるでしょうか。
エリスロポエチンは赤血球の産生を促進するホルモンであり、その感受性が向上するということは、赤血球がより産生されやすくなるということであり、最終的に貧血の改善に寄与する可能性があります。
炎症の軽減
透析患者の病態の特徴の1つとして、慢性炎症が挙げられていますが、運動療法はそれを改善することが知られています。
ここで、何故炎症と貧血が関係するのかと疑問に思った方もいるかと思います。
そのメカニズムを簡単に説明すると、炎症が長く続くと、赤血球をつくるための正常な働きが障害されてしまうからです。
炎症は本来病気に侵された部位や感染源を取り除くための反応ですが、それが重くなったり慢性化すると、健全な部位の方まで炎症が広がってしまうことがあります。
炎症が広がることで、免疫細胞が自らの赤血球まで攻撃したり、炎症性サイトカインが骨髄において定常状態の赤血球生成を抑制します
また、炎症がおこると、肝臓でヘプシジンというホルモンの合成が増えます。
ヘプシジンには、赤血球の材料である鉄の吸収や利用を抑制する作用があるため、ヘプシジンが増えると赤血球の産生が阻害され、貧血になってしまうのです。
すなわち、運動による炎症の軽減は、赤血球の寿命を延ばし、貧血の改善につながる可能性があるのです。
貧血症状の改善
ここまで、貧血自体の改善のメカニズムを説明してきましたが、貧血の”症状”の改善にも運動療法は効果があります。
こちらについても、幾つか説明していきましょう。
酸素利用効率の向上
透析患者さんに限りませんが、運動により、末梢組織の酸素利用能が向上します。
これもわかりやすく言うと、筋肉が酸素を消費する際の燃費が改善するイメージです。
これにより、同じ赤血球数でもより効率的に酸素を利用できるようになり、相対的に貧血症状が改善する可能性があります。
ここで言う貧血症状とは、疲れやすさや息切れのことです。
循環動態の改善
運動療法により心機能や末梢循環が改善されることも、貧血症状の改善に繋がります。
循環動態の改善により、組織への酸素供給が効率化され、相対的に貧血症状の軽減につながる可能性があります。
運動療法が心臓に与える影響は以前の記事でも紹介していますので、こちらも是非参考にしてください。
まとめ
今回は、運動療法が貧血の改善にどのように影響するかという内容について話を進めてきました。
最後に内容をおさらいしていきましょう!
- CKD患者さんでは腎臓でのエリスロポエチン(EPO)産生が低下し、腎性貧血を引き起こし、心臓の負担の増加にもつながる。
- 赤血球の産生が促進される。
- エリスロポエチンの感受性が向上する。
- 炎症が改善する。
- 酸素利用能や循環動態が改善し、貧血症状の改善につながる。
以上のメカニズムにより、運動療法はCKD・透析患者の貧血の改善に寄与すると言われています。
貧血症状は、身体を動かすことに直結し、それが患者さんのADLやQOLにも大きく影響します。
貧血がある患者さんには、投薬や栄養療法ももちろん、運動療法の提供も一考してみてください。
※貧血があるということは、疲れやすい・息が切れやすいといった状態でもあるので、運動療法はの実施際しては、十分にリスク管理を行ってください。※
この記事が、皆さんお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
改めて、本年もよろしくお願いします!
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