透析患者のMDC・MCIDについて解説

医療

こんにちは、K田です!

いきなりですが皆さん、MDC・MCIDという言葉を聞いたことがありますか?

リハビリテーションに従事するほとんどの方は、身体機能等の評価を行い、治療の効果判定を行うと思います。

その目安となるのが、MDC・MCIDです。

これは腎臓リハビリテーションでの運動療法においても活用することができます。

そこで今回は、透析患者さんの運動療法における、MDC・MCIDについて解説していこうと思います。

この記事はこんな人にオススメです!

  • 腎臓リハビリテーションを実施している人
  • 腎臓リハビリテーションの運動療法の効果判定について知りたい人

MDCについて

MDCとはminimal detectable change:最小可検変化量のことを示します。

MDCは、再テスト等の繰り返し測定により得られた2つの測定値の変化量の中で、測定誤差の大きさを示したものです。

その変化の大きさにより

MDC以内の変化は測定誤差によるもの

MDCより大きい変化は測定誤差以上の変化

と判断されます。

つまり、

変化の結果が誤差なのか、本当に差が出たのか判断する値

ということです。

例えば、あなたがTUG(Timed Up and Go test)を行ったとしましょう。

先行研究によるとFlansbjerは慢性脳卒中患者に対するTUGのMDCは2.9秒と報告されています。

すなわち

TUGの変化量が2.9秒以内=誤差

TUGの変化量が2.9秒より大きい=誤差以上の変化

と捉えることができます。

ここで注意しないといけないのは、MDCは”測定誤差以上の変化”であり、”改善量”ではありません。

TUGでも、早くなった場合のみでは無く、遅くなった場合も考慮する必要があります。

MCIDについて

MCIDとはminimal clinically important difference:臨床上意義のある最小差のことを示します。

下記の先行文献では”アウトカムにおける対象者が改善または悪化と感じることができる最小差”と定義されています。

引用:Measurement of health status. Ascertaining the minimal clinically important difference

Pudmed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2691207

また、他の文献によると

MCIDとは治療の有効性が得られたと判断できる評価尺度の変化量であり,治療による変化量がMCIDを上回っていれば,意味のある変化が生じたと判断することができるものである。

理学療法の介入効果判定におけるMinimal clinically important difference(MCID)の必要性 宮田一弘 2021 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/48S1/0/48S1_C-77-1/_article/-char/ja/#:~:text=MCID%E3%81%A8%E3%81%AF%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AE,%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82

と報告されています。

つまり、

評価の変化量がMCIDより大きければ、治療の効果あり!!

ということです。

例えば、あなたが回復期リハ病等の運動器疾患患者さんのFIMを評価しているとしましょう。

先行研究によると、中口らは”回復期リハ病棟の運動器疾患患者が、ADL改善を自覚するFIM運動スコアのMCIDは14.6点である”と報告しています。

すなわち

FIM運動スコアの変化量が13点=効果なし

FIM運動スコアの変化量が15点=効果あり

と捉えることができます。

ちなみに、先述のMDCとMCIDの違いは何かというと

MDC→誤差かどうかの判別

MCID→効果があったかどうかの判別

となります。

この点は、混同しないように注意が必要です。

透析患者さんのMDC・MCID

それでは次に、透析患者患者さんのMDC・MCIDを確認していきましょう。

下の図は、私が文献を参考に作成した、透析患者患者さんんのMDC・MCID一覧です。

なお、こちらのMCIDはstageG3b~G5の患者さんを対象としており、純粋な透析患者さんのMCIDではないため、ご承知おきください。

握力

透析患者さんの握力のMDCは3.4〜5.5kg

と報告されています。

つまり、この値以下の変化は誤差と捉えることができます。

握力は診察室内やベッドサイドでも簡便に評価でき、全身状態のスクリーニングとなるため、臨床上有用な指標の1つです。

しかし、握力は必ずしも下肢の機能改善の効果判定には適さないため、注意が必要です。

膝伸展筋力

膝伸展筋力は下肢の筋力評価の代表的な指標です。

1回の最大反復重量(1RM)で評価することができます。

透析患者さんの膝伸展筋力のMCIDは7.3kg

報告されています。

つまり、改善量がこの値より大きければ、臨床的に意義のある変化が生じたと捉えることができます。

立ち座りテスト

立ち座りテストは

5回または10回反復する「時間」を評価するSTS-5・STS-10

30秒または60秒に反復できる連続最大「回数」を評価するSTS‐30、STS-60があります。

透析患者さんの

  • STS-5のMCIDは2.5〜4.2秒
  • STS-10のMDCは8.4〜8.5秒
  • STS‐30のMDCは2.6回
  • STS-60 のMDCは4〜5.4回

と報告されています。

この中でSTS-5はSPPBの構成要素の1つでもあり、簡便に評価を行うできる指標の1つです。

快適歩行速度

快適歩行速度は、様々な疾患で予後予測と相関があります。

透析患者さんの快適歩行速度のMDCは0.3m/sec

と報告されています。

つまり、この値以下の変化であれば、誤差と捉えることができます。

バランス機能

片脚立位

透析患者さんにおける片脚立位のMDCは11.3〜14.1秒

と報告されています。

つまり、この値以下の変化であれば、誤差と捉えることができます。

しかし、糖尿病を原疾患とする患者さんは、末梢神経障害のためよりバランス機能がより低下することが報告されています。

そのため、バランス機能が低下したケースではMDC未満の改善でも、運動療法の効果があったと解釈できる場合もあります

TUG(Time up and go test)

透析患者さんにおけるTUGのMDCは2.1秒〜3.44秒

と報告されています。

つまり、この値以下の変化であれば、誤差と捉えることができます。

TUGは片脚立位と比較し、動的なバランスを評価するため、複合的な身体機能が必要です。

そのため、TUGの結果が低値の場合には、何がバランス機能低下に影響しているか、他の身体機能評価から判別することが重要になります。

SPPB

透析患者さんのにおけるSPPBのMDCは0.9〜1.7点

と報告されています。

つまり、この値以下の変化であれば、誤差と捉えることができます。

SPPBは総合的な下肢機能評価であり、フレイルやサルコペニアのカットオフ等、低身体機能の判別に有用な指標です。

しかし、ある程度身体機能が保てれいる患者に対しては天井効果が生じるため、そのような場合には他の評価も交えて効果判定を行う必要があります。

6MWT(6分間歩行試験)

透析患者さんにおける6MWTのMCDは66.3〜77m

と報告されています。

つまり、この値以下の変化であれば、誤差と捉えることができます。

6MWTは運動耐容能の評価となりますが、透析患者の運動耐容能の低下は、生命予後と関連します。

そのため、無症候の透析患者さんにおいても、早期から運動耐容能の評価が必要です。

まとめ

今回は、MDC・MCIDを解説してきました。

また、透析患者さんにおけるMDC・MCIDの紹介も行いました。

透析患者への運動療法は、今やスタンダードになりつつありますが、ただ運動療法を行ってハイ終わり!ではいけません。

ちゃんと効果判定を行い、現状のプログラムが適当であるか、確認していく必要があります。

要するに、ちゃんとPDCAサイクルを回すことが重要なのです。

そのためにも、MDC・MCIDのことを十分に考慮しつつ、身体機能評価を継続していかなければなりません。

この記事は、皆さんのMDC・MCIDの理解の向上、ひいては患者さんへの介入の質の向上に寄与できれば幸いです!

なお、直近の書籍では、臨床透析6月増刊号に腎臓リハビリについて詳しく載っているので、興味のある人は是非一読することをオススメします!(楽天やAmazonで見つからなかったので、Dr.で持っている先生がいれば見せてもらってください。)

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました