ChatGPTは理学療法士の仕事に活用できるのか?

AI

こんにちは、K田です。

先日は、記事内でAI検索ツールについて紹介しました!

今回は、実際にChatGPTが理学療法士の日々の仕事に活用できるのか!?

を検証していこうと思います。

この記事のこんな人にオススメです!

  • 医療従事者の方
  • AIの臨床での活用方法を知りたい方

ChatGPTとは?

ChatGPTは、高度なAI技術によって、人間のように自然な会話ができるAIチャットサービスです。

OpenAI社によって2022年11月に公開されました。

正式名称は、Chat Generative Pre-trained Transformer(文章生成モデル)といいます。

ChatGPTの機能は自然なテキスト生成に留まらず、翻訳、文章の要約、プログラミングコードの生成など多岐にわたります。

無料で使えるの?

ChatGPTは、メールアドレスの登録のみで無料利用できます。

有料プランには、「ChatGPT Plus」という名のプランがあり、Web版・アプリ版ともに利用できます。

価格はWeb版が$20/月・アプリ版が¥3000/月であり、現在の為替レートを考えると、Web版の方が価格が高くなるようです。

有料プランの機能としては、優先的なアクセス、高速で高精度のチャット機能(モデル:GPT-4)、Bing検索を踏まえた回答、拡張機能(プラグイン)の利用が可能です。

無料版の注意点

無料版では、GPT-3.5が使用されています。GPT-3.5はChatGPTのデフォルトモデルであり、その高性能版がGPT-4ということになります。

無料版ChatGPT=GPT-3.5で、簡単な文章生成であれば問題なく使用可能です。

しかし、入力内容によっては精度が低くなり、必ずしも信頼できる内容ではないことがあります。

残念な点:学習されているデータが2021年9月までのものであること

ChatGPTでは、今までの学習したデータを元に回答が生成されます。

すなわち、学習されていないデータ(例えば昨日発表されたばかりの論文やニュースの内容)は反映されないため、注意が必要です。

なお、ChatGPTでは、2021年9月までのデータが学習に使用されています。

本記事執筆時点で2024年7月なので、約3年前のデータまでしか学習されていないことになります。

これは、医療に関する情報収集をするにあたっては、致命的です。

臨床で調べごとをする上でならまだしも、論文を作成する際には、参照する文献は直近5〜6年以内のものが原則と言われています。

そのため、3年前のエビデンスや文献と現在の内容が変化している際は、生成される内容が不正確になってしまう可能性があります。

実際に使ってみた

検索ツールとして

とはいっても、実際に使ってみないと、その有用性は確認できません。

そこで、今回は「腎臓リハビリテーションについて最新の知見を教えて」という簡単なプロンプト(指示)を作成し、生成された内容を確認してみます。

生成された内容は以下のとおりです。

運動療法の重要性: 腎臓病の患者に対しても、適切な運動療法が推奨されています。これにより筋力が維持され、心血管機能が改善されることが期待されます。特に、軽度から中等度の慢性腎臓病の患者において、運動による恩恵が確認されています。

栄養管理の最適化: 腎臓リハビリテーションにおいては、栄養管理も重要な要素です。特にタンパク質摂取量の調整や、リンやカリウムなどのミネラルの制限が適切に行われることが推奨されています。

精神的サポートの提供: 腎臓病は精神的なストレスを伴う場合が多いため、患者に対する精神的サポートやカウンセリングも重要です。ストレス管理や生活の質の向上に役立ちます。

医療チームとの連携: 腎臓リハビリテーションは、多職種の医療チームによる継続的なサポートが必要です。腎臓専門医、栄養士、理学療法士、精神科医などが協力し、患者に最適なケアを提供します。

予防的なアプローチの重要性: 腎臓リハビリテーションでは、進行を遅らせるための予防的なアプローチも含まれます。早期の介入や、病態に応じた個別化された治療計画の策定が推奨されています。

ChatGPTより

内容としては、可もなく不可もなくといったところでしょうか。

今回はプロンプトがかなり簡単であるため、かなりあっさりとした内容となりましたが、しっかりとプロンプトを作成することで、さらに詳しい内容が得られる可能性があります。

もう少し臨床にそった内容も聞いてみましょう。

質問プロンプトは

「あなたは経験豊富な理学療法士です。
透析患者へ運動療法を行う際、血圧測定をしたところ、BP205/90 PR70でした。
この場合、運動療法の提供をどのように行いますか?」

としました。

生成された返答は、以下のとおりです。

透析患者に運動療法を提供する際、血圧がBP 205/90 mmHg、PR 70 bpmという値である場合、以下のようなアプローチが考えられます:

  1. 安静と観察: まずは患者を安静にし、数分間観察します。特に、血圧が高めの場合は安静にしているだけで自然に下がることがあります。
  2. 再測定: 安静後、血圧を再測定してみます。運動前と後で血圧に変化がある場合がありますので、複数回の測定を行うことが推奨されます。
  3. 運動の開始を遅延: 血圧が高めの場合、運動を開始する前に医師と相談し、適切な措置を検討します。血圧が適正範囲に戻るまでの間、運動を開始するのを遅延することが適切かもしれません。
  4. 運動の強度と種類の調整: 運動を開始する際には、強度や種類を調整して、過度な負荷や血圧上昇を避けるようにします。軽度の運動から始めて、徐々に負荷を増やしていく方法が考慮されます。
  5. 医師との連携: 血圧が高めの場合、医師と連携して運動療法の実施を検討し、必要に応じて薬物治療の見直しや追加的な医療管理を行います。

透析患者の場合、血圧管理は非常に重要ですので、運動前後の血圧の変化を適切にモニタリングし、安全かつ効果的な運動プログラムを提供することが大切です。

返答内容としては、特に問題はなさそうです。

しかし、具体的にどれくらいの血圧になればよいのかが不明なので、もう少し聞いてみました。

質問プロンプトは「運動療法を提供する上での血圧の適性範囲、いわゆる運動の中止基準はどのくらいですか?数字も提示して具体的にお応えください。」

としました。

生成された返答は、以下のとおりです。

運動療法を提供する際の一般的な血圧の適性範囲と、運動を中止する基準は以下の通りです:

  1. 血圧の適性範囲:
    • 収縮期血圧(上の数値): 100〜180 mmHg
    • 拡張期血圧(下の数値): 60〜100 mmHg
  2. 運動を中止する基準:
    • 収縮期血圧が180 mmHgを超える場合
    • 拡張期血圧が110 mmHgを超える場合
    • 不安定な血圧制御で、安静時にも血圧の急激な変動が見られる場合
    • 運動中に症状(頭痛、胸痛、息切れ、めまいなど)が現れ、それが血圧の異常上昇や不安定な変動の原因となる場合
    • 心拍数が安静時の最大心拍数(220歳から年齢を引いた値)の85%を超える場合(特に透析患者では心拍数の制限が重要)

これらの基準は一般的なガイドラインです。透析患者やその他の特定の医学的条件を持つ患者に対しては、さらに個別化された評価と管理が必要です。医師や理学療法士との協力を通じて、安全かつ効果的な運動療法プログラムを設計することが重要です。

回答は得られましたが、腎臓リハビリテーションガイドラインや心臓リハビリガイドラインに即したものではなく、リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドラインともまた異なります。

そのため、この回答では実際の臨床場面における活用は難しいと考えられます。

結論

ChatGPTの回答を、そのまま臨床場面に持ち込むのはオススメしない。

翻訳・校正ツールとして

だからといって、ChatGPTの使い道が無いというわけではありません。

むしろ、得意分野で上手く活用すればよいのです。

ChatGPTの1番の特徴は、人間のように自然な会話をすることができることです。

その文章作成能力を活かして、翻訳ツールや文の校正ツールとしての活用もできます。

例えば、英論文で内容が不明なところがあれば、その内容をChatGPTに入力し、翻訳させるようプロンプトを作成します。

すると、日本語へ自動的に翻訳されるため、自分で英和辞典等を引っ張り出してきて調べるという手間がかなり省けます。

また、ChatGPTの高度な自然言語処理能力を鑑みると、文章構成は得意分野の1つと言えます。

使用例としては、抄録等の内容の校正や発表原稿のチェックが、身近な使用例です。

数百文字の中に伝えたい内容を詰め込むと、どこかした内容や文法にミスが生じるものです。

それをChatGPTに入力し、校正を指示するプロンプトを作成することで、容易に文章の修正が可能となります。

各ツールとしての特徴をまとめると、以下のようになりました。

翻訳ツールとして

  • ChatGPTは翻訳ツールとして、複数言語間の文の翻訳を行うことができる
  • 特定の文脈に応じた適切な用語の選択や、専門用語の扱いにも対応

校正ツールとして

  • ChatGPTは文法の修正や表現の改善のサポートが可能
  • 不自然な表現や誤った文法を指摘し、より流暢で正確な表現に修正することができる

まとめ

今回は、ChatGPTが日々の臨床で活用できるのか?

というテーマで話を進めて来ました。

K田的な意見としては

AI検索だけに頼りすぎず、上手く機能を活用しよう!

です。

AIは、わたしたちの日常を豊かで快適にしてくれる素晴らしいツールであることは間違いありません。

しかし、AIを使うのはあくまで”人間”です。

いくら高性能な車に乗っても、ドライバーが未熟だと、その性能を発揮することはできません。

AIにおいても、未熟な状態で使用するのではなく、しっかりと知識や使い方を学んだ上で、適切に活用していけるようにしましょう。

この記事が、皆さんのAIリテラシーの向上につながれば幸いです。

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