皆さんこんにちは、K田です!
病院や介護福祉施設で働いている方は、1度は透析患者さんを担当したり、接したことがあると思います。
透析患者さんの身体特性について、理解しておくべきポイントが多々ありますが、その中でも今回は【ドライウエイト】について話を進めていこうと思います。
透析患者さんの体調を管理するうえで、ドライウエイトの理解は必須です。
ポケモンのタイプ相性よりもしっかり理解しておく必要があります!
特に、安全かつ効果的なリハビリテーションを行う上でも非常に重要なポイントなので、是非最後まで見て、理解を深めていただければと思います。

この記事は、こんな人にオススメです!
- 透析治療について勉強している人
- 透析患者さんを担当している、する予定のある人
- リハビリテーション職全般
ドライウエイトとは?
まず最初に、ドライウエイトについて説明していこうと思います。
ドライウエイト(Dry Weight:DW)とは、透析終了時の目標体重のことで、除水を行って最終的に到達を目指す値です。
ドライウエイトの定義としては、
「体液量が適正で、透析中に過度の血圧低下を生じることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」
といわれており、患者さんの生活や体調により、その人に最適な体重が設定されています。
ドライウエイトが合っていないとどうなるか?
透析患者さんは、腎機能が喪失しているため尿が出ず、体内から余分な水分や老廃物を排出することが難しくなります。
そのため、摂取した水分はそのまま体内に留まり続けてしまいます。
そこで、透析中に血液中から余分な水分を抜く(=除水する)のですが、ただただ除水すればいいというわけではありません。
例えば、除水する量(=除水量)が少なすぎた場合、体内に余分な水分が残ってしまいます。
その水分は浮腫や胸水として出現します。また、循環血漿量も増大します。
その結果、息切れや動きづらさ、高血圧といった症状が出現し、それらが悪化すると心不全につながってしまいます。
逆に、除水量が多すぎた場合は、体内はどうなるでしょうか?
体内の水分が少なくなってしまうと、疲労感や倦怠感が生じやすくなり、循環血漿量が減少するため、血圧も低くなります。
健常人でも、脱水状態となるとふらふらになったり、疲れやすくなったりしますよね?
透析では、人工的にそれと同じような状態を作り出しているのです。
これらの問題があるため、ドライウエイトを設定し、体内の水分量を多すぎず少な過ぎないちょうどいい状態にする必要があるのです。
ドライウエイトの設定方法
ドライウエイトが透析患者さんの身体にとって、非常に重要であることがわかったところで、ドライウエイトはどのように設定するのでしょうか?
ドライウエイトを設定するために確認する指標は以下のとおりです。
- 血圧
- 胸部レントゲン
- 心胸郭比(CTR)
- 自覚症状
- ECW/TBW
- 採血データ(BNP)
これらの情報を得るために、透析患者さんは他の疾患の患者さんよりも高い頻度で検査を行うことがあります。
ちなみに、私が努めているクリニックでは、胸部レントゲンは月2回、採血は月1回行っています。
また、ドライウエイトを設定するときには、これらの値を組み合わせて判断します。
例えば、血圧も高くCTRの値も大きければ、ドライウエイトの減量が検討されます。
しかし、血圧が高いだけであれば、投薬治療で調整されることもあります。
ドライウエイトの変更は、主に医師が判断する場合が多いため、何故変更されたか気になる場合には、担当の看護師や医師に確認してみるといいでしょう!
なぜリハ職もドライウエイトを理解する必要があるのか?
ここまで、ドライウエイトについて説明してきました。ドライウエイトが、透析患者にとって非常に重要なものであることは理解していただけたと思います。
では、何故リハビリテーション職が、ドライウエイトを理解する必要があるのでしょうか?
「透析の担当の人だけ知ってればいいんじゃないの?」と思ったそこのあなた!
「ばっかも〜ん!」とまではいいませんが、今からその理由を説明していきますので、是非この後の内容を読んでいただき、理解を深めていってください。
DWが合っていない状態で運動すると何が起こるか?
リハビリテーションを行うということは、多かれ少なかれ身体活動を伴います。
DWは多すぎても少なすぎても患者さんの身体に様々な影響を与えます。
身体を動かすということは、普段より患者さんの身体は何らかのリスクが高まる状態となるため、より身体にどんな影響が起こるか確認していおく必要があります。
DWが多すぎる場合
DWが多すぎる(過剰な水分が体内に残った状態)場合、以下のような問題が生じます。
- 高血圧:水分が過剰になると、血圧が上昇しやすくなり、心負荷が増大する可能性があります。
- 息切れ:胸水が貯留したりや肺うっ血が進行すると、運動時に息切れや疲労を感じやすくなります。
- 浮腫:浮腫により身体が重く感じたり、可動域制限や動かしづらさを感じることがあります。
即ち、DWが多すぎる状態で運動するということは
”運動耐容能が低下した状態での運動となり、心臓により負担がかかりやすくなる”
と考えることができます。
DWが少なすぎる場合
DWが少なすぎる(過剰な水分除去が行われた状態)場合、以下の問題が生じます。
- 低血圧:起立性低血圧が起きやすく、運動中の転倒につながる可能性があります。
- 筋疲労、筋痙攣:血液量が減少しているため、筋肉への血流が不足し、筋肉疲労や痙攣が起こりやすくなります。
- 倦怠感:体内の水分量が低下することで、健常人でも疲労感を感じることが報告されています。透析患者さんにおいても、過度な除水により疲労感・倦怠感を引き起こされます。
即ち、DWが少なすぎる状態で運動するということは
”低血圧症状や倦怠感が生じやすく、運動パフォーマンスは著しく低下する”
と考えることができます。
臨床場面ではどのように考える?
前項で、DWが多すぎる場合と少なすぎる場合に生じる問題点を説明しました。
では、それらの情報を元に、実際にリハビリテーションを行う場面ではどのように考えていけばよいのでしょうか?
DWが多すぎる場合では、”運動耐容能が低下した状態での運動となり、心臓により負担がかかりやすくなる、
DWが少なすぎる場合では、”低血圧症状や倦怠感が生じやすく、運動パフォーマンスは著しく低下する”とお伝えしました。
これらの症状は一見すると異なりますが、本質的に確認するポイントは同じで、
バイタル管理を厳密に行い、患者さんの自覚症状や反応を注視する
ことが非常に重要となります。
また、運動負荷も低負荷にするなど、運動内容自体も調整する必要が出てきます。
場合によっては、リハビリを中止する判断を取ることも必要となります。
これらの判断をするためには、リハビリを行う前にあらかじめ
透析条件・その日の透析の様子・除水量・透析中の血圧変動・投薬の種類
を確認しておく必要があります。
今挙げたのは最低限確認しておくべき内容であり、患者さんによっては更に他の情報も確認する必要があります。
しかし、透析患者さんを専門に診療していないセラピストには、これらの情報を確認し、理解するのは少しハードルが高いかもしれません。
そのため、積極的に看護師や臨床工学技士、医師に確認を取り、情報収集を行っていかなければなりません。
まとめ
今回は、透析患者さんリハビリテーションを行う上で超重要なドライウエイトについてお話を進めてきました。
今回の話をまとめると
- ドライウエイト(DW)とは、体液量が適正で、透析中に過度の血血圧低下を生じることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重
- DWが多すぎると、運動耐容能が低下した状態での運動となり、心臓により負担がかかりやすくなる
- DWが少なすぎると、低血圧症状や倦怠感が生じやすく、運動パフォーマンスは著しく低下する
- 安全なリハビリを行うためにも透析条件・その日の透析の様子・除水量・透析中の血圧変動・投薬の種類を確認しておく
となります。
透析患者さんへのリハビリテーションを安全かつ効果的に行うためにもドライウエイトについてはしっかりと理解を深めておきましょう。
ここまでご覧いただきありがとうございました!
もっと理解を深めるために
最後に、もっとドライウエイトや腎臓リハビリテーションについての理解を深めたい!という方に、オススメのサービスや書籍を紹介させていただきます。
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以前、看護師さんに勧められ、こちらで勉強しました。
この記事が、みなさんのドライウエイトや透析、腎臓リハビリテーションの理解の向上につながれば嬉しいです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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