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皆さんこんにちは、K田です!
最近、サルコペニア・NRI-JHと栄養関連の話題を取り上げています。
今回はそれに関連して、protein-energy wasting(PEW)について解説していこうと思います。
また、実際のリハビリテーション場面での活用についてもお話していこうと思います!
この記事はこんな人にオススメです!
- protein-energy wastingについて知りたい人
- リハビリテーション栄養について興味のある方
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等、リハビリテーションに関わる全ての人
- 透析医療・腎臓リハビリテーションに従事している人
PEWとはタンパク質やエネルギー貯蔵が減少している状態
protein-energy wastingとは?
protein-energy wasting(PEW)とは、筋肉や脂肪などのタンパク質やエネルギー貯蔵が減少している状態をいいます。
PEWは2006年に、国際栄養代謝学会:the International Society of Renal Nutrition and Metabolism(ISRNM)が提唱した、透析患者の低栄養に関する呼称です。
PEWの4つの診断基準
PEWの診断基準は
- 低アルブミン血症などの生化学検査の異常
- 体格の評価
- 筋肉量の低下
- 食事摂取量の低下
の4項目が挙げられています。
各項目には条件があり、その少なくとも1つ以上を満たした項目が、3つ以上あるとPEWとして診断されれます。
PEWの関連因子
透析患者の低栄養の特徴は、栄養摂取量の少ない飢餓状態と異なり、炎症が関与している点です。
透析患者の低栄養では、炎症性サイトカインの影響により異化亢進が生じており、慢性炎症が動脈硬化が合併しやすく、MIA症候群(malnutrition inflammation atherosclerosis症候群)と呼ばれています。
PEWの関連因子には、エネルギーやタンパク質摂取の減少や上記のような炎症と言った点以外にも、CKD・尿毒症物質・合併症(心血管疾患,糖尿病,鬱)・体液過剰・身体機能と筋肉量の低下・透析関連因子があります。
また、透析患者さんにおいては消化管運動が低下し、食欲低下や嘔気が出現し、その影響でPEWを惹起することも考えられます。
しかし、消化管運動が改善し、消化器症状が改善することで食欲も改善し、栄養状態が改善する可能性も考えられます。
さらに、透析治療自体が低栄養を進行させる原因となる可能性も述べられています。
血液透析患者および腹膜透析患者においては、アミノ酸の喪失が4〜8g/日であり、ダイアライザーの再使用で1回の透析で20gのたんぱく質を失うことが報告されています。
しかし、20gと来てもピンとこないと思います。
具体的な量に例えると、
- 手のひらサイズの肉や魚
- 卵3〜4個(卵1個でタンパク質6〜8g)
- 牛乳600〜800ml(200mlで6〜8g)
- チーズ1枚(約18g)
のいずれかの量の食事を摂る必要があります。
先述したように、食欲が低下した患者さんにおいては、少し大変な量であると言えます。
PEWと他の評価項目との関連性
PEWは栄養の評価指標ですが、身体機能・他の栄養指標・ADL等との関連性も報告されています。
それらもいくつかを文献を元に紹介していきます。
握力
入院患者における握力とPEW、死亡率との関連を検討。握力低下はPEWの発症リスクと独立して死亡率上昇と関連。
Association of grip strength with protein-energy wasting and mortality in hospitalized patients: A retrospective cohort study.
- 著者:Mariani G, et al.
- 出版誌:Clin Nutr. 2019; 80: 61-67.
高齢者における握力とPEW、機能状態との関連を検討。握力低下はPEWの発症リスクと機能低下と関連。
Handgrip strength and its association with protein-energy wasting and functional status in older adults: A meta-analysis.
- 著者:Chen YF, et al.
- 出版誌:J Geriatr Phys Ther. 2020; 43(1): 23-30.
Mini Nutritional Assessment(MNA)
高齢者入院患者におけるMNAスコアとPEW、機能転帰との関連を検討。MNAスコア低下はPEWの発症リスクと機能転帰不良と関連。
Mini nutritional assessment scores are associated with protein-energy wasting and functional outcomes in older hospitalized patients.
- 著者:Bozzetto L, et al.
- 出版誌:J Geriatr Nutr. 2018; 23(4): 475-481.
癌患者におけるMNAスコアの予後予測値をシステマティックレビュー・メタ分析で検討。MNAスコア低下は生存率低下と関連。
The prognostic value of the Mini Nutritional Assessment (MNA) in patients with cancer: A systematic review and meta-analysis.
- 著者:Zhu Y, et al.
- 出版誌:Oncotarget. 2017; 8(24): 41292-41300.
体力
高齢者における体力とPEWとの関連を検討。体力低下はPEWの発症リスクと関連。
Physical performance and protein-energy wasting in older adults: A systematic review and meta-analysis.
著者:Wang J, et al.
出版誌:J Geriatr Phys Ther. 2019; 42(2): 102-111.
癌入院患者におけるフレイルとPEWとの関連を前向きを検討。フレイルはPEWの発症リスクと独立して死亡率上昇と関連。
Association between physical frailty and protein-energy wasting in hospitalized patients with cancer: A prospective cohort study.
著者:Zhang Y, et al.
出版誌:Support Care Cancer. 2019; 27(12): 4883-4890.
高齢者におけるPEWとADLとの関連を検討。PEWはADL低下と関連していた。
Protein-energy wasting and its impact on activities of daily living in older adults: A systematic review and meta-analysis.
著者:Volpi E, et al.
出版誌:J Geriatr Nutr. 2018; 23(1): 5-12.
慢性閉塞性肺疾患患者におけるPEWと機能状態、QOLとの関連を検討。PEWは機能状態低下とQOL低下と関連。
The impact of protein-energy wasting on functional status and quality of life in patients with chronic obstructive pulmonary disease.
著者:Cichocki T, et al.
出版誌:Respir Care. 2013; 58(12): 1804-1810.
PEWは当初は透析患者さんに対する栄養評価指標として提唱されましたが、透析以外の患者さんとの関連性も報告されていますね。
リハビリテーション場面での活用
それでは、PEWについての診断や評価が、実際のリハビリテーションの場面でどのように活用していくか考えていきたいと思います。
1.PEWの早期発見・早期介入
理学療法評価として握力、骨格筋量などの評価は日常的に行われます。
それらの評価を元に、PEWのリスクのスクリーニングを行うことができます。
リスクが高い患者には、栄養状態の評価を行い、PEWの診断を行います。
PEWと診断された患者には、早期に適切な治療を開始することで、筋力低下やADLの低下などの合併症を予防することができます。
2. 運動療法
PEWの患者には、筋力トレーニングや有酸素運動などの運動療法が有効と言われています。
筋力トレーニングを行うことで、PEWの診断基準である筋肉量の低下を回避することができます。
また、筋肉量を増やすことで、身体機能やADLの低下を予防することができます。
3.環境整備
PEWと診断された患者さんの多くは、身体機能が低下し、比較的転倒リスクが高い可能性があります。
先行研究でもADL低下の関連が報告されており、転倒予防のために、住環境を整備することが重要です。
手すりや滑り止めマットを設置したり、段差をなくしたりするなど、患者さんの生活状況に併せた対策が必要になります。
そのため、PEWの患者さんには訪問リハビリテーション等の介護サービスの利用を勧めることも検討してもよいかもしれませんね。
4. 家族への教育
PEWに関する知識を家族に提供し、患者さんのケアに協力してもらうことも重要な視点の1つです。
特に、自宅での栄養状態の管理においては、ご家族のサポートが必須です。
ご家族へも客観的な指標を用いて説明することで、より患者さん本人の身体状況への理解が深まりやすくなります。
必要に応じて、配食や訪問看護等サービスを提供することで、御本人の栄養状態改善やご家族の負担軽減に寄与できる可能性があります。
まとめ
今回は、protein-energy wasting(PEW)についてお話を進めてきました。
PEWは、身体機能のみならず、ADLにも影響が出るということは、興味深い点でした。
PEWは海外のデータを参考にされているため、日本人のデータとそぐわないとも言われていますが、重要な評価指標の1つであるという点においては間違いないでしょう。
データが揃えば直ぐにでも確認ができる指標ですので、皆さんも是非臨床で活用してみることをオススメします。
本記事が、皆さんの栄養評価の理解向上の一助となれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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