こんにちは、K田です。
先日は先日は【腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果について〜vol.2~】と題して腎臓リハビリテーションが左心室収縮能の亢進(安静時・運動時)にどのように影響するかについてお話させていただきました。
【併せて読みたい👇】
今回は、腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果について〜vol.3~ということで
【心臓副交感神経系の活性化】についてお話していこうと思います。
腎臓リハビリテーションとは?
まず、腎臓リハビリテーションについておさらいします。
腎臓リハビリテーションとは、CKD患者の身体機能や生活機能を改善するために、医師、理学療法士、作業療法士、栄養士などの専門チームが協力して行うプログラムです。運動療法、食事指導、心理社会的サポートなどを組み合わせることで、症状の改善、合併症の予防、QOLの向上などが期待できます。
今回は、この中の、運動療法の効果について話していきます。
心臓副交感神経系とは?
まず最初に、心臓副交感神経系とは何ぞや?というところからお話していきます。
その前に、まずは心臓のポンプ機能の支配についてお話しておかなくてはなりません。
交感神経および副交感神経による心臓支配
心臓のポンプ機能は、心臓に豊富に分布している交感神経と迷走(副交感)神経によって支配されています。
心拍出量は交感神経の刺激により増加し、迷走(副交感)神経の刺激によって減少士ます。
交感神経による心臓興奮のメカニズム
交感神経刺激によって、わたしたちの心臓の心拍数は上昇します。
正常の心拍数である70回/分から180〜200回/分にまで上昇させることができます。(ここまで上昇するのは、スポーツ選手やF1ドライバー等ごく一部の限られた人になりますが)
また、交感神経刺激は心収縮力は正常の2倍まで増加させることで拍出する血液量を増加させ、駆出圧も上昇させます。
交感神経が亢進することで心拍数や心拍出量が増加するのであれば、逆に交感神経が抑制されることで、ある程度まで心臓のポンプ機能を低下させます。
正常状態では、心臓の交感神経はゆっくりではありますが持続的に放電=働いています。
そのため、全く刺激がない状態と比べ約30%高いレベルのポンプ機能を維持していまる。
交感神経が正常以下に抑制された時には、心拍数と心筋収縮力の療法が低下し、その結果として心臓ポンプ機能は正常より約30%も低下します。
副交感(迷走)刺激は心拍数と心収縮力を減少させる
心臓を支配している副交感神経を強く刺激すると、心拍が数秒間止まります。
しかし、それでは生命維持に関わるため、心臓はその状態を回避しようとします。
そうすると、副交感神経の刺激が続いているうちは拍動は20〜40回/分となります。
その結果強い副交感(迷走)刺激は、心筋収縮力は20〜30%低下させます。
迷走神経は主に心房に分布しており、強力に収縮する心室にはそれほど多く分布はしていません。
この分布が”副交感(迷走)神経刺激が主として心拍数を減少させ、心収縮力の抑制はそこまで強くないこと”の原因です。
CKD患者さんの交感神経系の働き
交感神経と腎疾患の結びつきは以前から報告されています。
交感神経の亢進により高血圧を生じ、高血圧の持続により腎機能は低下します。
これは、交感神経活動の亢進によりレニン・アンジオテンシン系の働きが亢進し、高血圧が進行するためと報告されており、交感神経系の活動の亢進と腎機能増悪については相関関係が指摘されています。
また、交感神経活動の亢進が高血圧以外にも蛋白尿、腎機能低下につながるとも報告されています。
そして慢性腎臓病(CKD)になると、約80%の人が高血圧を合併します。
さらに腎機能低下に伴い交感神経系が亢進するとの報告もあります。
これは尿毒症物質が延髄の交感神経中枢ニューロンの活動亢進に働きかけ、全身の交感神経活動を亢進させることで生じているためと報告されています。
交感神経系が亢進するとどうなるか?
交感神経系の亢進機序については数多くの研究報告がありますが、交感神経活動の賦活が大きく影響してくる病態が心不全です。
心不全では心臓のポンプ機能の低下や弁膜の異常により、心臓から全身への拍出量が減少し、動脈圧低下や圧上昇速度が低下するため、圧受容器体反射を介して交感神経活動が惹起されます。
特に慢性心不全では、交感神経活動が不活化、迷走神経活動が低下していることが病態形成の中心的な役割を果たしています。
透析患者さんは先述の通り交感神経が亢進している状態にあると言われており、心不全になりやすい状態であると言えます。
なお、透析患者さんの死因の第一位が心不全と言われています。
ここで、透析患者さんが心不全になりやすい理由も引用ですが掲載させていただきます。
透析患者が心不全になりやすい理由
- 尿量の減少あるいは無尿になると、摂取した水分や塩分はそのまま体重増加に繋がって、心臓への負担を増します。透析間の体重増加が多く、透析のたびにドライウェイト(DW)までしっかり除水できない場合には、過剰な水分を常に体内に残してしまうことになり、心臓への負担を増すことに繋がります。
- 血圧の管理が悪く高血圧が長期に持続すると、心臓肥大を生じて心臓への負担が増します。
- リンやカルシウムの管理が悪いと、心臓の筋肉の働きを障害し、心臓の弁の石灰化から心弁膜症(大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症)を生じて心不全を起こしやすくなります。
- 貧血は心臓の働きを障害し、心不全を起こしやすくします。
- 十分な透析を行っていない場合には、尿毒症性の心筋障害を生じる危険性があります。
- 糖尿病や高血圧・高脂血症・喫煙歴のある人、高齢者は動脈硬化が進行しやすく、虚血性の心臓病を生じやすくなっており、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心臓病は心不全の大きな危険因子となります。
引用元:JA静岡厚生連 遠州病院 HP
運動が副交感神経に与える影響
運動療法は、自律神経系に対しては、交感神経緊張の抑制および副交感神経緊張の亢進をもたらすこといわれています。
そのため、心疾患患者の持続的な交感神経活動の亢進による心不全の進展、重症不整脈の発生を予防するため、運動療法が実施されます。
先述の通り、透析患者さんは交感神経活動が亢進しており、それにより心不全の合併リスクが高まっています。
すなわち、運動療法の実施による副交感神経の亢進は、心不全の予防に繋がってくると言えます。
なお、今回参考にした先行研究では、カルボーネン法で30%負荷の運動を行った郡においては、運動実施直後のデータですが、副交感神経活動の亢進を認めたと報告されています。
まとめ
今回は、腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果について〜vol.3~ということで
【心臓副交感神経系の活性化】についてお話しをしてきました。
話をまとめると
運動療法により心臓副交感神経が活性化し、高血圧の予防や心臓への負担の軽減につながる。
ということになります。
適切に運動を行うことで、心臓を守ることに繋がるのです!!
前回もお伝えしましたが、【心腎連関】という言葉があるように、CKD・透析患者さんと心機能については切っても切れない関係にあります。
運動療法というと、骨格筋機能にばかり着目されがちですが、こういった自立神経といった内的な要素にもしっかり目を向けていく必要があります。
今回のお話で、皆さんの腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果についての理解が深まり、少しでも日々の診療の質の向上に寄与できたなら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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