腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果について〜vol.2~

医療

こんにちは、K田です。

先日は【腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果について〜vol.1~】と題して腎臓リハビリテーションが最大酸素摂取量の増加にどのように影響するかについてお話させていただきました。

今回は、腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果について〜vol.2~ということで

【左心室収縮能の亢進(安静時・運動時)】についてお話していこうと思います。

腎臓リハビリテーションとは?

まず、腎臓リハビリテーションについておさらいします。

腎臓リハビリテーションとは、CKD患者の身体機能や生活機能を改善するために、医師、理学療法士、作業療法士、栄養士などの専門チームが協力して行うプログラムです。運動療法、食事指導、心理社会的サポートなどを組み合わせることで、症状の改善、合併症の予防、QOLの向上などが期待できます。

今回は、この中の、運動療法の効果について話していきます。

左心室収縮能とは?

本題に移る前に、左心室収縮能とは何ぞや?というところからお話していきます。

循環器や心臓リハビリテーションの勉強をしたことが無いと、中々”左心室収縮能”という単語は聞き慣れないかと思います。

左心室収縮能とは、心臓の左心室がどれだけ力強く血液を送り出すことができるかを表す指標をいいます。

左心室は体循環へ血液を送り出す部位です。すなわち、身体を動かす際により力を必要とします。

そのため、左心室の力が低下すると運動する時に過剰に負担がかかり、心疾患を罹患するリスクが上昇します。

左心室の力は、左心室駆出率(LVEF)という指標で評価されます。LVEFが低下すると、心不全や心筋梗塞などの重篤な病気を引き起こすリスクが高くなります。

LVEFは心エコー検査で評価をすることができます。

LVEFの値で、以下のような理解をすることができます。

健常者60〜70%以上肉体労働でも問題ない
軽度障害者50〜60%同上
中等度障害者30〜50%事務職であれば問題ない
重度障害者30%以下肉体労働であれば、夜勤や転職のない軽労働へ
20%以下必要最小限の身辺活動を余儀なくされる

なお、透析患者さんの平均LVFE値は約40%と推定されています。

もちろんこれは個人差がありますが、上の表に当てはめると、透析患者さんは中等度障害者と同等レベルに該当すると言えます。

すなわち、負荷のかかる肉体労働は避ける必要がある=就業内容が限られる可能性が出てくることを意味します。

また、透析患者さんの身体特性として、体液過剰となりやすかったり、腎性貧血を合併することが挙げられます。

体液過剰となると、うっ血状態となりやすくなり、心負荷が上昇します。

貧血に関しても、全身への酸素供給量が低下し、その結果として心拍数の上昇に繋がり、心臓への負荷も増大します。また、最近では”心腎貧血症候群”という概念も提唱されています。

このように、LVEFが低下していることで、身体機能的な問題はもちろん、ADL・仕事の面でも影響が出てきてしまうのです。

腎臓リハビリテーションが左心室収縮能を向上させるメカニズム

以上のように、LVEFの低下は日常生活を送る上で、望ましくないということはイメージできたと思います。

そんな中、運動療法によりLVEFが改善するというのは、非常に魅力的な話と聞こえると思います。

そこで、次に運動療法による左心室収縮能向上のメカニズムを説明していきます。

前負荷・後負荷の変化

運動療法により、血管拡張能や運動中の血圧反応が改善します。

また、下肢筋の機能改善により、末梢骨格筋ポンプ機能も改善されます。

これらの影響により前負荷・後負荷が上昇しづらくなります。

そのため、心臓のポンプ機能を改善している可能性があることが報告されています。

心筋への血流増加

CKD・透析患者さんにおいては、冠動脈疾患・虚血性心疾患を合併した患者さんも少なくありません。

末期腎臓疾患患者の総死亡の45%は心血管関連死とされており、また約20%が急性心筋梗塞による脂肪であるとされています。

そのような患者さんにおいては、おのずと心臓にダメージを抱えている状態であり、おのずと心機能は低下いる傾向にあります。

しかし、運動療法の実施により、心臓の血管の側副路の発達を介して心筋機能の向上に貢献するということも報告されています。

心臓も筋肉なので、そこに栄養や酸素をしっかり送ることができれば、しっかり収縮することができるようになります。

心筋の肥大抑制

運動によって心筋の肥大が抑制され、心筋の収縮効率が向上します。

CKD患者さんは、心筋肥大をきたしやすいことが知られています。

これは、高血圧や糖尿病などの合併症の影響によるものです。

心筋肥大は、心室のポンプ機能を低下させ、左心室収縮能を低下させる原因となります。

運動療法は心筋肥大の原因となる、高血圧や糖尿病を予防・改善する効果があることが報告されています。

すなわち、運動療法は心筋肥大をその原因から抑制し、心室のポンプ機能の改善に貢献するのです。

ホルモン分泌

運動によって、心筋の成長を促進するホルモン(例:成長ホルモン、IGF-1)の分泌が促進されます。

これらのホルモンは、心筋細胞の増殖や肥大を促進し、心筋の機能向上に寄与します。

CKD患者さんは、これらのホルモンの分泌が低下していることが示唆されています。

腎臓リハビリテーションによる運動療法は、これらのホルモン分泌を促進し、心筋機能の改善に貢献する可能性があります。

まとめ

今回は、腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果について〜vol.2~ということで、【左心室収縮能の亢進(安静時・運動時)】についてお話してきました。

【心腎連関】という言葉があるように、CKD・透析患者さんと心機能については切っても切れない関係にあります。

LVEFの低下は患者さんのADL・QOLの低下に直結します。

運動療法というと、骨格筋機能にばかり着目されがちですが、こういった内部的な要素にもしっかり目を向けていく必要があります。

今回のお話で、皆さんの腎臓リハビリテーションにおける運動療法の効果についての理解が深まり、少しでも日々の診療の質の工場に寄与できたなら幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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